2006年09月20日00:21
夢と別れに乾杯(1)
明「もういいってなんだよ!いくらなんでも一方的過ぎるじゃないか!」
千恵「・・・そうね・・・わがままいってごめん」
明「また・・・」
千恵「わかって」
明「わからん」
千恵「わぁかぁれぇてぇくぅだぁさぁいぃー」
明「わぁかぁれぇなぁいぃー」
千恵「わからずや!」
明「わかるかよっ!」
千恵「ねぇ・・・、もう電話切るよ・・・。これまでありがとうね。これからも頑張ってね。アキラの自慢の仕事も・・・お酒のみ過ぎないようにね。それからあんまり夜更かしすると目にわるい・・・」
明「切れよ・・・。電話。」
千恵「・・・」
明「オレは切らないからな・・・」
千恵「うん・・・。じゃ、バイバイ・・・」
明「・・・」
切れた電話を置くと、すぐにまた携帯電話が鳴った。
「千恵っ!」
直樹「おーアキラ!いたかぁ。直樹だけど。終電なくてさぁ。わるいけど泊めてくれん?」
明「・・・あ、ああ。いいけど。」
直樹「わるいなぁ」
そのまま朝まで飲んだ。一人でいるよりいい。出勤。体調も最悪なら気分も最悪。太陽は黄色いし、やたらとのどが渇く。二日酔いと眠さで体重が二倍になったような気がした。おまけに頭も痛い・・・定時で切り上げて帰ろうかと思ったところに直樹からまた電話があった。
直樹「あのさ、明後日、休みだろ。礼もしたいし遊びに来ないか。」
明「あさって?ああ。午後でいいか。」
直樹「じゃ、な。あさって」
結局その後、帰りがけに酒を浴びるほど飲んで朝帰り。スーツのまま寝たらしい。なんとなく午後になったら目が覚めた。んー・・・まー直樹んトコ、いくか。
直樹「お、アキラ。悪いなぁ。泊まったり呼んだり。」
圭子「久しぶりー。」
明「ああ、圭子ちゃん。ほんと久しぶり。」
直樹「早速でなんだけど、昨日来たよ。千恵。これから大阪に行ってくるって。帰ったら会社辞めるって?」
圭子「なんか、やっぱり音楽の世界に戻りたいってね。でもお父さんの具合も良くなくていろいろ考えてるらしいよ。」
明「らしいね・・・。じゃ、別れたのも聞いた?」
直樹「うん。昨日きいたよ。お前、何にも言わなかったな。」
明「ああ。」
圭子「千恵、アキラといると幸せすぎて、でも忙しすぎて、楽しすぎて、だからそれでいいかなって思ったり一緒にいると元気が出たりほっとしたり、とにかくいっぱいしゃべってったよ。」
明「そうか。」
圭子「でももう嫌いになったって。嘘じゃなくて本当にきらいなんだってさ。」
明「嘘でも本当でもどっちでもいいよ。もう別れたんだから・・・」
直樹「ま、納得できん、って顔には書いてあるけどな」
圭子「千恵、だんだん言いたいこといえなくなったって言ってたよ。」
直樹「すぐ怒るからな。アキラ」
明「ほっとけ」
直樹「ほら、怒った。」
明「怒ってねーよ」
圭子「本当はアキラに相談したかったんだろうな。いろんなこと。千恵は自分を取り戻したいんだって。」
明「本当は、か・・・。」
圭子「言えないから相談できないし、ま、いい加減にもできないから自分で決めたって事だと思うけど。」
直樹「よっぽどお前よりオトコマエだな。」
圭子「へんな合いの手入れないでよ。直樹!」
明「・・・・でも結局、あいつが一人で勝手に別れるって決めて・・・」
圭子「勝手、かぁ。それ違うと思うけどね。恋愛ってそういうものじゃないかな。」
四人とも大学の頃からの友人だった。千恵が話していないわけがない。忘れてた。そりゃそうだ。だからといって、二人のことをあんまりかき回されたくない。それに、今度は別れ話、じゃなくて別れたって話だ。できればほっといて欲しいと心底思う。こんな話題のテーブルでも、ここに千恵がいないのが不思議だな、いや不自然だよな、そう思う。
直樹「ま、結婚してるわけじゃないし、ね。俺たちは結婚しちゃってるからちょっと違うんだけどね」
圭子「あら?そうでもないわよ?女は思ったらそうするんだから。」
直樹「ええっ!勘弁してくれよ・・・」
明「ま、女と男の違いだろ?」
圭子「またわかったような事いうの、アキラの悪い癖だよ?それよりさ、音楽、また本気で始めるっていってた。」
直樹「それそれ。それだよ。」
圭子「千恵の前途を祝して乾杯しようよ。」
直樹「おう! 乾杯だ。なっ!。アキラ。」
(シャンパンを台に置く音。グラスに注ぐ音。)
明「なんで?この状況でカヨ。オレ、振られたばっかりなんだけど・・・今日は勘弁してくれないか?」
直樹「ダメ。今。『いつかキット千恵は本気で夢を追いかける』って。『そのときは無条件に応援してやるんだ!』って。もう忘れたか?アキラが言ったんだぞ。」
明「・・・ああ・・・覚えてるさ・・・。」
直樹「じゃ、千恵の夢、応援してやれよ。だろ?」
圭子「そうね。応援してあげようよ。」
直樹「よしっ、乾杯しよ・・・」
明「ちょっと、ちょっとまて。このシャンパン、」
味を確かめるように、すこし飲んでしまう
明「ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム ロゼ。金色に輝くパール・ピンクの泡が特長。。赤い果実を思わせる香りは、やわらかなアロマと大地の息吹きが交錯する。口に含むとフレッシュ・フルーツの新鮮さが香り立ち、続いてピュアなドライ・フルーツのアロマ感を楽しむことができる。」
直樹「わかるのか?お前、ソムリエみたいだな。」
明「千恵の受け売りだよ。これ、千恵が持ってきたのか?」
圭子「・・・うん。そう、だよ。千恵が持ってきた。でもそれは言わないでって言ってた。」
明「そうか・・・。あいつと何かを祝う時はいつもこれだった。でもなぁ・・・」
圭子「アキラ元気付けてあげて、って。ねぇ?」
直樹「うん。言ってたな。ま、すぐばれちゃったけど。」
明「そうか・・。なるほど・・・。千恵らしい・・・な。」
圭子「千恵らしい?」
明「あいつ、オレにも走れって言ってんだ。わかったよ! 乾杯してくれ。オレと千恵 それぞれ 二人の未来に。」



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